腰痛の症例|悪化した時期に集中して通う方・椎間板ヘルニアの診断を受けた約2年半の経過
| 患者 | 40〜50代・女性/長時間の移動と拘束が続く仕事 |
|---|---|
| 主訴 | 腰痛(首肩のこり・頭痛・吐き気を伴う) |
| 来院時 | 服薬なし/検査歴なし/マッサージと複数の鍼灸院の利用歴あり |
| 診断 | L4/5椎間板ヘルニア(通院開始から約2年後) |
| 通院 | 約2年半で20回前後/痛みの波に合わせて間隔が伸び縮みする型 |
| 施術 | 腰部・臀部・股関節の前側・頭部(現在の体系ではダブルコースが対象) |
| 現在 | 通院継続中 |
来院までの経緯
腰の痛みは長年のもので、忙しい時期に首肩のこり・頭痛・吐き気とセットで強まる、という訴えでした。半年に一度ほどぎっくり腰を繰り返しており、そのたびにマッサージや鍼灸院を利用してきたとのことです。
お仕事は現場の拘束時間が長く、移動の車中で座っている時間も長くなります。判断すべきことが多い立場でもあり、慢性的に過労気味の状態が続いていました。同じ姿勢のまま動けない時間の長さと、休息の取りにくさが重なっている構造です。
痛みの強い時期に他院で受けた鍼で症状が悪化した経験があり、鍼そのものへの警戒が残っている状態でのご来院でした。服薬はなく、医療機関での検査も受けていませんでした。
初回の所見と施術
触診では腰から臀部にかけての筋緊張が強く、あお向けで脚を伸ばしたまま持ち上げると腰から脚にかけて痛みが出る所見がありました。徒手検査の結果から、椎間板由来の痛みの可能性を念頭に置いて施術を組み立てています。
施術範囲は、初期はうつ伏せでの腰部・臀部が中心でしたが、経過の途中からあお向けでの頭部や股関節の前側の筋肉まで広がりました。おなか側と背中側の両方にまたがるため、現在のコース体系ではダブルコースが対象になります。座っている時間が長い方は股関節の前側の筋肉が縮んだまま固まりやすく、この方の場合も経過を通じてここが繰り返し課題になりました。
その後の経過
通院のしかたは一貫して、痛みが強まった時期に集中して通い、落ち着けば間隔があく型でした。初めてのご来院から約1年9か月がたった頃、股関節の前側にある筋肉の短縮を示す検査所見が確認され、腰そのものだけでなく股関節まわりを含めて施術範囲を見直しています。
その数か月後、痛みが腰から臀部へ広がった時期には1か月に5回来院されました。この時期にほかの施術所で受けた手技の内容をうかがったところ、刺激量と、部位に対する鍼の長さが足りていない印象を受けました。当院ではこの回、横向きの姿勢で臀部などに通常より長い鍼(中国鍼)を用いています。刺してすぐ抜く方法では感覚が届かないとのことでしたので、鍼を上下に動かして、鍼特有のずーんと重い感覚(響き)が出るまで刺激しました。初回の施術後に「かなり改善した」という報告があります。ただし、慢性の腰痛では初回から変化を感じる方もいれば、数回の通院を要する方もいます。
同じ月に、医療機関で受けた検査でL4/5椎間板ヘルニアの確定診断がついています。処方された鎮痛薬と湿布では変化がなかったとのことでした。痛みが長引いていた経過をふまえ、この時期からは腰部への施術に加えて、あお向けでの頭部への鍼通電を併用しました。
その後の2回の来院で落ち着き、数か月は来院がありませんでした。しかしその後、再び痛みが出て、別の鍼灸院で施術を受けたものの変化がなく、当院への通院を再開されています。
ご本人の言葉は「ほかの鍼は芯にあたっていない感じがした」というものでした。鍼は刺す深さと角度によって届く層が変わります。表層の筋肉と、股関節の奥にある筋肉とでは、届かせるための刺し方が異なります。通院を再開した時点の触診では、右の股関節の前側の筋肉、お尻の外側、太ももの外側の筋肉が硬くなっており、刺鍼したときに響きがはっきり出ていました。
施術者の考察
椎間板ヘルニアの診断がついたあとも、痛みが再燃したときに硬くなっているのは、椎間板そのものではなく股関節まわりと臀部の筋肉でした。画像で確認できる構造の変化と、その日に痛みを出している組織は、必ずしも一致しません。
鍼で椎間板の突出そのものを戻すことはできません。ただ、痛みやしびれを出しているのは椎間板だけではなく、周囲の筋肉の緊張や、神経のまわりの血流の低下も関わっていると考えられています。深い層の筋緊張がゆるみ、局所の血流が変わることで、症状が軽くなる余地はあります。この方の場合も、診断がついたあとに硬さが出ていたのは股関節まわりと臀部の筋肉で、そこへの施術に反応して訴えが変わっていました。
この方の場合、仕事の負荷が上がる時期に痛みが強まり、落ち着けば間隔があく、という波がはっきりしています。診断名が確定したことよりも、その波に合わせて通院の間隔を伸び縮みさせられていることのほうが、経過を支えている要素だと考えています。
この症例に関する注意
- 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
- いつもの痛みと様子が違うと感じるとき、あるいは脚の力が入りにくいなどの変化があるときは、鍼灸より先に医療機関の受診をご検討ください。
- このページは、実際の経過を匿名化して記録したものです。効果を保証するものではありません。
腰痛に対する鍼灸の考え方は腰痛への鍼灸にまとめています。
