寝違えの症例|マッサージで悪化した首の痛み・2回で終了した経過

患者50代・女性/立ち仕事の多い仕事
主訴左の首から肩にかけての痛み(寝違え)
来院時発症から3日/上を向く・横を向く動作で痛みが出る状態
診断なし
通院1週間隔で2回/以後4か月以上、この症状での来院なし
施術うつ伏せで首・肩・背中への鍼と低周波鍼通電/刺激量を抑えて実施
現在来院終了
目次

来院までの経緯

朝起きたときから左の首から肩にかけて痛みが出た、いわゆる寝違えの状態でご来院されました。発症から3日目です。上を向く動作と、横を向く動作で痛みが誘発される状態でした。

ご来院の前日にマッサージを受けられていますが、そのあと痛みが強くなったとのことでした。今回の症状に対して受けられたのはマッサージのみです。これまでに鍼灸や整体を受けた経験はお持ちでした。

問診のなかで、以前に鍼を受けたあと頭痛が強くなったことがある、というお話がありました。これは施術の組み立てに直接影響しています。

初回の所見と施術

触診では左の首から肩にかけて硬さがあり、患部に熱を持っている感じはありませんでした。急に痛めた直後で炎症が強い場合は刺激を控えますが、この方は発症から3日が経過し、熱感もなかったため、通電まで行える状態と判断しています。

鍼のあとに頭痛が強くなった経験があるということは、刺激に敏感な体質である可能性が高いので、通常より細い鍼を選び、全体の刺激量を抑える方針で組み立てています。うつ伏せで首、肩、背中、腰に鍼をして、首と肩には低い周波数の電気を流しました(低周波鍼通電)。施術範囲は背中側にまとまっているため、現在のコース体系ではスタンダードコースが対象になります。

腰に刺していた鍼については、ご本人が痛みを感じられたため、途中で抜いています。刺激に敏感であるという見立てが、実際の反応でも裏づけられた形です。施術後に動作を確認したところ、上を向く動きと横を向く動きはいくらか楽になっていました。この日は経過を見ることとしています。

その後の経過

1週間後の2回目では、訴えの内容が変わっていました。上を向くときと首を回すときに、左の首から肩甲骨の内側にかけてつらさを感じる、というものです。ご本人も、前回の寝違えの痛みとは別のものだと話されていました。急な痛みが引いたあとに残っていたこりの部分が、動作のなかで出てきた状態です。

この回はうつ伏せで、首、肩、背中の硬くなっている部分に鍼をして通電を行いました。腰については、前回の反応をふまえて鍼を置いたままにせず、刺してすぐ抜く方法に変え、あわせて温める機器を使っています。施術後に動作を確認したところ、痛みは出なくなっていました。

この2回で終了となり、以後4か月以上、この症状でのご来院はありません。

施術者の考察

この症例で最も判断が要ったのは、刺激量をどこまで下げるかでした。過去に鍼のあとで頭痛が強くなった経験があるという情報は、施術の効き方そのものより先に検討すべき材料です。細い鍼を選び、痛みを訴えられた部位はその場で抜くという対応を取りました。刺激を強くすれば早く変化が出るというものではなく、その方が受け止められる範囲を超えないことのほうが、結果的に近道になります。

2回目に訴えの場所と質が変わった点も、この症例の特徴です。急に痛めた部位の痛みと、その周囲に元からあったこりは別のもので、前者が引くと後者が動作のなかで表に出てきます。この回の訴えは肩甲骨の内側まで及んでおり、初回に主眼を置いた首から肩の範囲とは一致していません。触診で硬さの分布を取り直したうえで、施術する部位を組み替えています。急性の症状で来院された方でも、初回で終わらずに2回目があるのは、この切り替えが必要になるためです。

ご来院の前日に受けられたマッサージのあとで、痛みが強くなったというお話もありました。痛めた直後の組織は炎症を起こしていることが多く、その状態で外から強く圧を加えれば、症状が悪化する方向に働きます。手技そのものの問題というより、受ける時期の問題です。当院でも、痛めた直後であることが分かっている場合は、炎症が強い部位への刺激を控えめにします。この方の場合は発症から3日が経ち、熱感もなかったため、通電まで行える状態と判断できました。

この症例に関する注意

  • 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
  • 首を動かせないほどの強い痛みが続く場合、手のしびれや力の入りにくさをともなう場合、発熱がある場合は、施術より先に医療機関の受診をお願いしています。
  • 個人が特定されないよう、経過の記述は抽象化しています。また、同様の経過を保証するものではありません。
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この記事を書いた人

佐藤長快のアバター 佐藤長快 鍼灸師

吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門の施術を行っています。
18歳の頃に鍼灸を初めて受け、その効果を実感し、その後鍼灸の道へ。以来さまざまな流派・技法の施術を受け続け、これまでに100名以上の施術者の鍼を経験してきた鍼灸愛好家でもあります。

国家資格:はり師・きゅう師(鍼灸師)
東京医療専門学校 鍼灸専科 卒業
上海中医薬大学 短期留学 推拿コース/解剖コース 修了
公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員
認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International)臨床研究オンライン学習プログラム 修了

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