自律神経失調症の症例|緊張が続いて食べられない状態から、約1か月の経過
| 患者 | 30代・女性 |
|---|---|
| 主訴 | 自律神経の不調(常に緊張している感じ)/胃もたれと食欲の低下/おなかの張り/首肩のこり |
| 来院時 | いくつかの病院で検査を受けたが原因は見つからず、ストレスによる自律神経の不調と言われた |
| 診断 | 検査で異常なし/ストレスによる自律神経の不調と言われている |
| 通院 | 約1か月で3回 |
| 施術 | 手足・おなか・首肩・背中/鍼とお灸(鍼に電気を流す方法は使用せず) |
| 現在 | 気になったときの来院 |
来院までの経緯
自律神経の不調ではないか、というご自身の自覚がありました。常に緊張している感じが抜けず、胃がもたれてあまり食べられない。おなかの張りも自覚されています。首と肩のこりも強い。それぞれ以前からありましたが、1年ほど前からひどくなったそうです。
いくつかの病院で検査を受けましたが、原因は見つかっていません。受診先でも、ストレスによる自律神経の不調だろうと言われています。胃の除菌治療は済ませておられました。鍼灸は以前に受けたことがあり、整体や漢方も試されたことがあるとのことでした。
初回の所見と施術
触れてすぐに分かるほど過敏な状態でした。弱い刺激でも張りがよく緩むかわりに、少し強くすると体がこわばります。刺激量を最小のところから組み立てています。
仰向けでは膝の下と足首の内側、それにおなかへ鍼をしました。腕にも鍼をしましたが、途中できつく感じられたため、腕だけ先に抜いています。
うつ伏せでは、筋肉を包む膜(筋膜)の層で鍼を止め、そこで刺激を加える方法をとりました。この方は鍼を筋肉の層まで進めると響きが強く出て、体がこわばる方向に向かいます。首から肩、背中にかけて鍼を刺したまま10分ほど置いています。あわせて首の後ろにお灸をしました。鍼で筋肉の層まで刺激を届けられないぶん、熱でツボを刺激して同じ深さへ届かせる意図です。
施術範囲がおなか側と背中側の両方にまたがるため、現在のコース体系ではダブルコースが対象になります。
その後の経過
2回目の施術は10日ほど後でした。前回からだいぶ良くなり、食べられるようになったと話されています。腕については、置いたままにせず刺してすぐ抜く方法に変えました。この回、顔のむくみが気になるという訴えが新しく出ています。首と肩のこりが強く、顔まわりの血流が落ちているためと推察しました。
3回目の施術はさらに2週間半ほど後です。自律神経の症状はだいぶ落ち着き、いちばんの訴えが首肩のこりに移っていました。食べられる状態も続いています。この回は腕の肘の下にも鍼をして、首の横にも入れました。腰に硬さがあったため、初めて腰にもしっかり鍼をしています。足の裏が冷えていたので、温熱療法で加温しました。
自律神経の症状が落ち着いたことで、ここでいったん区切りとしました。首肩のこりやそのほかの症状が気になったらまた来ていただく形で、経過を見ています。
施術者の考察
刺激に対する過敏さが、症状と一緒に動きました。初回は腕の鍼が途中できつくなって抜いたほどでしたが、3回目には腰までしっかり鍼を入れられています。体のつくりが変わったわけではなく、症状が落ち着いたぶんだけ受けられる刺激の幅が広がった、という順序です。
自律神経の不調では、手足に鍼をして低い頻度で電気を流すのが当院の基本の組み立てです。この方には初回から使っていません。腕に鍼を刺しただけできつくなる過敏さがあり、そこへ電気を加えれば施術そのものが負担になると判断したためです。3回目以降も、鍼通電を行わなくても鍼の刺激だけで十分に緩むので使用していません。
筋膜の層で鍼を止めたのも、同じ刺激量の調整です。深く進めれば響きが強く出て、体がこわばる方向に向かう。こわばってから戻すのではなく、その手前で止めます。恒久的にこわばりやすい方ということではなく、3回目には筋肉の層まで届く鍼を受けられています。
自律神経測定は使っていません。手足のツボで皮膚の電気の通りやすさを測り、経絡ごとの偏りを見るもので、ご希望があれば行っています。この方は手で触れて確かめた反応がはっきりしていたため、問診と触診で組み立てられました。
症状が長く続いている方ほど、落ち着くまでに時間がかかる傾向があります。この方は1年ほど続いた状態でしたが、そこには当てはまりませんでした。症状の数が3つほどだったこと、回を重ねるごとに打てる範囲が広がったことが重なり、3回で区切りをつけられています。
この症例に関する注意
- 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
- 食欲の低下や体重の減少が続く場合は、鍼灸より先に医療機関の受診をお願いしています。
- ご本人が特定されないよう内容を抽象化しています。同じ経過をお約束するものではありません。
自律神経の不調に対する鍼灸の考え方は自律神経失調症への鍼灸にまとめています。
