自律神経失調症の症例|検査で異常なし・6つの症状が重なった状態から2年の経過
| 患者 | 50代・男性/長時間の残業が続く会社員 |
|---|---|
| 主訴 | 不眠/耳鳴り/胸の苦しさ/不安感/喉と鼻の奥の詰まり感/倦怠感 |
| 来院時 | いくつもの科で検査を受けたが、はっきりした異常は見つからなかった |
| 診断 | 検査で異常なし/医師から自律神経失調症と言われている |
| 通院 | 約2年で84回(開始時は週1回/のち隔週・月1回へ) |
| 施術 | 手足・おなか・背骨の両脇・首の後ろ/鍼とお灸(鍼に電気を流す方法は初期に試したのみ) |
| 現在 | 間隔を空け、必要と感じたときの来院 |
来院までの経緯
長時間の残業が続く仕事をされている方です。パソコンに向かい、書類を読み、人に気を使う。そうした負荷が長く続いてきた方でした。
症状は一度に出たものではありません。いちばん古いのは耳鳴りで、数年前から、仕事が立て込む時期に出ていたそうです。その後、倦怠感と胸の痛みが加わりました。来院の1か月ほど前になって、不眠、息苦しさ、喉と鼻の奥がヒリヒリ詰まる感じ、そして強い不安感が重なっています。この時点で、ご本人が挙げられた症状は6つを超えていました。
いくつもの科で検査を受けられましたが、はっきりした異常は見つかっていません。最後にかかった医療機関で、自律神経失調症と言われています。鍼灸を受けたのは30年ほど前に一度きりで、それ以来だったそうです。
初回の所見と施術
初回はご希望があり、施術の前に自律神経測定を行いました。手足のツボで皮膚の電気の通りやすさを測るもので、結果には偏りが出ていました。活動が高まっている側と、逆に落ちている側がはっきり分かれています。触診で確かめた手足と背骨の両脇の反応とも重なる部分があり、その日どこに鍼をするかの判断に使っています。
症状の数が多く、鍼灸から30年離れていた方でしたので、細い鍼を選び、浅い深さから始めました。仰向けでは手足とおなかに鍼をして、胸の詰まる感じを訴えられた胸の中央にも鍼をしています。鍼を刺したまま10分ほど置きました。うつ伏せに変わってからは、背骨の両脇を首から腰までたどり、反応の出ている場所に絞って鍼をしています。首の後ろと背中には温熱療法で加温し、太ももにも鍼をしました。
施術範囲がおなか側と背中側の両方にまたがるため、現在のコース体系ではダブルコースが対象になります。
その後の経過
2回目は、寝るときの不安感と胸の苦しさがいちばん強い訴えでした。この回、首の後ろに鍼をしたところ「鼻が通った感じがする」と話されています。喉と鼻の奥の詰まり感は、以後の訴えには出ていません。
初期に2回、鍼に電気を流す方法(低周波鍼通電)を試しました。いずれも刺激が強く感じられたため、以後は使っていません。鍼とお灸だけで組み立てる形が、そのまま2年続いています。
4回目から5回目にかけて、寝るときの不安感が軽くなり、睡眠薬を使わずに眠れる日が増えたと話されました。胸骨の痛みもこの時期に引いています。耳鳴りは「マシになってきた」という程度で、日によって出方が変わる状態が続きました。
頭に鍼をした回では、終わったあとに頭がふわふわする感じが残ったとのことで、以後は頭への鍼をやめています。同じ頃から、いちばんの訴えが首肩のこりに移りました。仕事量が増えた時期には耳鳴りと胸の苦しさが強まり、落ち着いた時期には軽くなる。この連動が、経過を通してはっきりしていました。
1年ほど経った頃から、耳の反応が出ている場所に、貼るタイプの鍼を使うようになりました。ご本人からも、貼っていると調子がよいという実感が出ています。また、この時期には別の症状で1か月ほど施術内容を変えた期間もありました。
週1回の通院は1年半ほど続きました。その後、忙しさが変わらないなかでも体調が保てるようになり、隔週へ、さらに月1回へと間隔が空いています。現在は、そろそろ崩れそうだと感じたタイミングで来院されるという形になりました。
施術者の考察
症状が軽くなった順序が、出てきた順序と逆になりました。来院の1か月前に加わった不安感・喉の詰まり感・不眠が最初に引き、その前からあった胸の症状が次に落ち着き、数年前からあった耳鳴りが最後まで残っています。最後まで残った耳鳴りは、仕事の忙しさに合わせて強さが変わり続けました。
自律神経の不調では、手足に鍼をして低い頻度で電気を流すのが当院の基本の組み立てです。この方にも初期に2回試しました。施術中は平気でも、後になって刺激がきつかったと話されたため、以後は電気を外し、鍼の刺激量そのものも落としています。症状が落ち着いた今も、鍼とお灸だけで硬さは緩みます。もともと刺激に敏感な方だったと推察しています。
通院のペースは、初期はこちらから週1回で組み立て、その後はご本人からしばらく週1回で続けたいという希望がありました。施術のあと、体の力が抜けて「楽になる」という実感がその日のうちに出る方で、それが1年半続いています。忙しさが変わらないなかでも体調が保てるようになってから、間隔が空いていきました。
この症例に関する注意
- 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
- 動悸や胸の痛み、急な体重の減少などが新しく出てきた場合は、鍼灸より先に医療機関の受診をお願いしています。
- ご本人が特定されないよう内容を抽象化しています。同じ経過をお約束するものではありません。
自律神経の不調に対する鍼灸の考え方は自律神経失調症への鍼灸にまとめています。
