首こりの症例|首に鍼ができないところから始め、受けられる範囲が広がった約3年2か月の経過

患者60代・女性/静かな環境での座り仕事
主訴首・肩・背中の鈍痛(初回の1か月ほど前から)
来院時過去に鍼で強い刺激を受けて体調を崩した経験があり、首への鍼を希望されない状態
診断10年ほど前から頸椎症の指摘あり
通院約3年2か月で14回(数か月の空白を複数はさむ)
施術足・腕・背中・肩/のちに首・側頭部・後頭部まで/鍼と灸のみ(通電は行わない)
現在最終来院から約7か月、来院なし
目次

来院までの経緯

静かな環境での座り仕事をされている方です。ご来院の1か月ほど前から首・肩・背中に鈍い痛みが出ていました。10年ほど前から頸椎症を指摘されていて、左側は背中のあたりまで痛みが出ることがあるとのことでした。

鍼灸は5年ほど前まで別の流派のところに定期的に通っておられ、整体や漢方を受けた経験もお持ちです。ただ、過去に鍼で強い刺激を受けた際に体調を崩されたことがあり、首への鍼は避けてほしいというご希望がありました。

初回の所見と施術

初回に使える手段は、かなり限られていました。通電は行わず、首には鍼をせず、強い刺激も避ける。この条件で組み立てられるものから始めています。

鍼は細いものを選び、置いたままにせず刺してすぐ抜く方法ですべて行いました。仰向けで手足に、うつ伏せで背中に鍼をして、基本調整を組んでいます。首と肩には鍼をせず、灸のみとしました。お灸を好まれるとのことだったので、初回は熱を通す灸を多めに使っています。施術範囲が仰向けとうつ伏せの両方にまたがるため、現在のコース体系ではダブルコースが対象になります。

その後の経過

2回目は12日後で、この間に首のこりがひどかったのは2〜3日ほどで、あとは良好だったとのことでした。この回から肩に2箇所だけ、鍼を刺したまましばらく置いています。

3回目では、耳の後ろから首すじにかけての痛みが訴えに入りました。鍼にある程度慣れてこられたため、この回から頭部にも鍼をしています。肩と背中、肩甲骨のあたりにも同じように鍼をしました。首はまだ灸で対応しています。

ここで数か月の空白が入ります。再開した回では、肩から下について鍼を刺したまま15分置けるようになっていました。首にはまだ灸です。この頃から、季節によって受けられる刺激量が違うことも見えてきます。春から夏はある程度強くても大丈夫で、秋から冬は弱めのほうがよい、という差がありました。

その次の回で、初めて首にしっかりと鍼を刺したまま置いています。初回から8か月ほど経った時点です。側頭部と後頭部にも同じようにできるようになり、食いしばりへの対応もここから入りました。訴えの中心はこの頃から背中や肩甲骨のほうへ移っています。

2年目に入ると、来院の理由が首や肩から離れていきました。腰の痛みと足のだるさ、体のだるさと咳、といった訴えが続きます。この時期に、お仕事の量が減った時期があり、その後は首肩の訴えそのものが軽くなっていきました。

ここで約8か月の中断があります。当院までの距離があるため、お近くの接骨院で週3回の電気治療に切り替えられていました。ただ、そちらでははっきりとした変化が出なくなったとのことで、再びご来院されています。

再開後の主訴は、鼻や喉の不快感、食欲の低下、目の奥の痛みなど、首肩とは別のところに移っていました。この時期も鍼と灸のみで組み立てています。ある部位で鍼をきつく感じられた際にその場で抜いた回もあり、受けられる範囲は変わり続けました。

3年目に入ると、鼻や喉の不調は訴えから消え、左のお尻から足にかけての痛みで来院されました。次の回にはお尻の訴えがなくなり、左の首・肩・背中と腕が第一の主訴に戻っています。この間に整形外科を受診され、腰の骨の間が狭くなっていると指摘されていました。この回を最後に、約7か月ご来院はありません。

施術者の考察

初回にできたのは、細い鍼を刺してすぐ抜くことと、灸だけでした。首には鍼をしていません。そこから、肩に2箇所、頭部、肩から下、そして首へと、鍼を刺したまま置ける範囲が回を追って広がっています。首にしっかりと鍼ができるまでに8か月ほどかかりました。

広がり方は一方向ではありません。この方の場合、季節によって受けられる刺激量に差があり、春夏と秋冬で組み立てを変えています。再開後にも、ある部位で鍼をきつく感じられてその場で抜いた回がありました。受けられる範囲は回ごとに確かめ直すものだと考えています。

首肩の訴えが軽くなったことについては、施術だけの結果とは考えていません。この時期にお仕事の量が減っており、首肩にかかる負荷そのものが下がっています。訴えの中心が首肩から腰、鼻や喉、お尻から足へと移っていったのも、同じ時期のことでした。

3年以上にわたって、数か月から8か月の空白をはさみながら来院が続いています。間隔が一定だったことは一度もありません。ご本人は、鍼灸を受けると症状が軽くなるという実感を持っておられました。症状が出たときに間隔を詰め、落ち着けば空くという使い方です。

この症例に関する注意

  • 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
  • 手のしびれや力の入りにくさをともなう場合、これまでに経験のない強い頭痛や吐き気がある場合は、施術より先に医療機関の受診をお願いしています。
  • 個人が特定されないよう、経過の記述は抽象化しています。また、同様の経過を保証するものではありません。
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この記事を書いた人

佐藤長快のアバター 佐藤長快 鍼灸師

吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門の施術を行っています。
18歳の頃に鍼灸を初めて受け、その効果を実感し、その後鍼灸の道へ。以来さまざまな流派・技法の施術を受け続け、これまでに100名以上の施術者の鍼を経験してきた鍼灸愛好家でもあります。

国家資格:はり師・きゅう師(鍼灸師)
東京医療専門学校 鍼灸専科 卒業
上海中医薬大学 短期留学 推拿コース/解剖コース 修了
公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員
認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International)臨床研究オンライン学習プログラム 修了

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