首こりの症例|刺激量を回ごとに変えた6回と、整形外科の受診をご提案した判断

患者50代・女性/在宅でのパソコン作業が中心の生活
主訴1年ほど前からの右側の首こり/食いしばり
来院時左を向くと右の首に痛みが出る状態/深いところのこりだという実感
診断なし(医療機関は未受診)
通院約7週間で6回(1〜2週間隔)
施術顎まわり・首の側面から前側・後頭部・首の付け根/肩・背中・腰/鍼と低周波鍼通電
現在最終来院から7か月以上、この症状での来院なし
目次

来院までの経緯

在宅でのパソコン作業とスマートフォンを使う時間が長い方です。1年ほど前から右側の首のこりと食いしばりが出るようになり、来院時は左を向くと右の首に痛みが出る状態でした。ご本人は深いところのこりだと感じておられました。医療機関は受診されていません。

これまでに、鍼灸、接骨院での整体、マッサージ、カイロプラクティック、筋膜リリースを受けた経験をお持ちです。

初回の所見と施術

食いしばりの訴えがあったため顎まわりとこめかみの筋を触診しましたが、硬さは訴えの強さから想像されるほどではありませんでした。触診での硬さと訴えが釣り合わない場合は、自律神経の状態によって感じ方の閾値が下がっていることを考えるので、局所への施術と並行して調整を目的とした施術を組み込んでいます。

仰向けで顎まわりとこめかみの筋に浅く鍼をして、手足に低周波鍼通電を行いました。左の顎まわりは、鍼を抜いたあとに痛みの訴えがあり、内出血などの所見はありませんでした。ここで、鍼の刺激にかなり過敏な方だと分かります。

うつ伏せでは首から後頭部、首の付け根に鍼を刺したまましばらく置き、通電を行いましたが、刺したまま置く部位の数は通常より減らしています。腰には温める機器を使いました。最後に座っていただき、右の首を痛みが出る向きに動かした状態で鍼をしています。振り向く動作で首の側面の筋が硬くなることを気にされていたため、その筋の付け根と後頭部にも鍼をしました。施術範囲が仰向けとうつ伏せの両方にまたがるため、現在のコース体系ではダブルコースが対象になります。

その後の経過

2回目は初回の1週間ほど後で、首に加えて腰の痛みの訴えが出ました。鍼の感じ方が初回ほど過敏ではなかったため、うつ伏せで首、肩、背中、腰、お尻に太めの鍼を使い、刺したまま置く部位の数も初回より増やしています。仰向けは足への通電のみです。

3回目では、腰と首の中ほどに硬結を触れるようになりました。初回と2回目は周囲の緊張が強く、硬さを分けて触れる状態ではありません。4回目は首に鍼をすると痛いという感じが強く出た回で、過敏さは一方向に減っていくものではないため、前回と同じ組み立てのまま続けています。

5回目では、何もしていないときの首の痛みがなくなり、左に振り向いたときだけ右の首に痛みが残る状態になりました。仰向けで右の首の側面から前側に鍼をして、うつ伏せでは腰の硬さが目立ったため、首・肩・腰への通電に背中側の温熱を併用しています。

6回目の訴えは首のみでした。首の痛みが解消しきらないため、この回は組み立てを変えています。痛みが1年以上続いていて6回の施術でも残っていることから、痛みが長引くこと自体によって感じ方の側が変化している可能性も考え、頭部にも鍼をして通電を行いました。あわせて、右の首には長い鍼を使って刺さる長さを大きくとり、これまでより強い刺激を加えています。初回に過敏と判断した方にこの刺激量を選べたのは、5回にわたって反応の出方を確認できていたためです。

経過の途中からは、首の痛みが十分に軽くならないことについて、整形外科での評価を受けることをご提案していました。最終回には、ご本人からも受診の意向を伺っています。

この回を最後に、7か月以上、この症状でのご来院はありません。

施術者の考察

初回に鍼の刺激へ過敏だと分かった時点で、選べる刺激量の幅はかなり狭くなります。この方の場合は鍼を刺したまま置く部位の数を減らし、浅く刺すところから始め、回を追って上げていきました。刺激量は初回の判断で固定するものではなく、そのつどの反応を見て動かすものだと考えています。

食いしばりは、訴えとしてありながら触診での硬さが見合いませんでした。この状態で顎の筋だけを強く狙っても訴えは動かないため、初回から手足への通電を組み込んでいます。経過で前面に出てきたのも食いしばりではなく、振り向く動作にともなう右側の首の痛みでした。

訴えとしては、何もしていないときの痛みが5回目でなくなり、動かしたときの痛みが残る段階まで来ていましたが、そこから先に進みませんでした。経過の途中から整形外科での評価をご提案していたのは、鍼灸で扱える範囲かどうかを当院の見立てだけで決め続けないためです。最終回で組み立てを変えた直後にご来院が途切れているため、その後の経過は把握していません。

この症例に関する注意

  • 経過には個人差があります。同じ診断名でも、症状の出方や通院の回数・間隔は一人ひとり異なります。
  • 手のしびれや力の入りにくさをともなう場合、これまでに経験のない強い頭痛や吐き気がある場合は、施術より先に医療機関の受診をお願いしています。
  • 個人が特定されないよう、経過の記述は抽象化しています。また、同様の経過を保証するものではありません。
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この記事を書いた人

佐藤長快のアバター 佐藤長快 鍼灸師

吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門の施術を行っています。
18歳の頃に鍼灸を初めて受け、その効果を実感し、その後鍼灸の道へ。以来さまざまな流派・技法の施術を受け続け、これまでに100名以上の施術者の鍼を経験してきた鍼灸愛好家でもあります。

国家資格:はり師・きゅう師(鍼灸師)
東京医療専門学校 鍼灸専科 卒業
上海中医薬大学 短期留学 推拿コース/解剖コース 修了
公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員
認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International)臨床研究オンライン学習プログラム 修了

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