「鍼治療って痛いの?」
「鍼が痛い時と痛くない時があるのはなぜ?」
こんにちは!吉祥寺メックス鍼灸院の佐藤です。
鍼治療を受けたことがない人がまず疑問に思うのは「鍼は痛いのか」ですよね。
この記事では「鍼を刺した時の痛み(切皮痛)」について解説していきます。
結論から言うと「痛くない場合が多いが、痛いときは痛い」という感じです。
鍼が痛い時と痛くない時にはそれぞれ理由があります。
様々な要因がありますのでぜひ最後まで御覧ください。
- 想像ほど痛くないと思う人がほとんど
- 全くの無痛・無感とういことはない
- 痛点に当たると痛みが出る
- 身体の場所や状態によって感じ方が変わる
想像ほど痛くない
鍼治療を受けたことがない人は鍼(はり)と聞くとイメージするのは注射針などで、採血やワクチン接種のときのような痛みがあるんじゃないかと考えているのではないでしょうか?
初めて鍼を体験される方にたくさん鍼をしてきましたが、殆どの方は思っていたほどの痛みは感じません。
中には鍼を打たれたことに気づかないこと人もいます。
逆に「思ったよりも痛かった」という感想をいただくことも稀にあります。しかし、鍼治療を途中で中断するほどということは基本的にありません。
もちろん、人により感じ方はそれぞれなので、感覚が鋭敏な方のほうが鍼を刺されたときの刺激を強く感じる傾向はあります。
鍼灸用の針はとても細い
一般的な1番鍼と呼ばれる 鍼の直径は0.16mmでとても細く、注射針のような痛みはありません 。
注射用の針は薬液を注射したり、採血する目的があるので針の中心に穴があり必然的に直径が太くなります。
注射針の太さは用途によっても違いますが、ワクチン接種などに使う注射針は25Gという規格で0.51mmです。
鍼治療に使う針は一般的な注射針の3分の1以下の直径 ということになります。
針先の加工技術が上がっている
昨今の鍼は加工技術も素晴らしく、痛くないように針先が加工されています。
当院で使用している鍼は先端が丸く滑らかに加工されており、鋭い痛みが出にくくなっているものを採用しています。
シリコンコーティング
潤滑剤として医療用のシリコンで針がコーティングされています。
シリコンコーティングがなされているほうがスムーズに身体に入っていくため痛みが軽減されます。
また、シリコンフリーといって鍼にシリコンコーティングをしていないものもあります。
鍼治療用の針にはシリコンコーティングされていることが多いので、シリコンアレルギーがある場合には必ず施術者にお伝え下さい。
無痛・無感ということはない
鍼灸師はできるだけ痛くないように鍼をするように心がけています。
しかし、気をつけていてもどうしてもチクっとした痛みが出てしまうこともあります。
鍼を刺す以上、施術の最初から最後まで全くの無痛・無感ということは基本的にありません。
皮膚には痛みを感じる痛点がある
皮膚で感じる感覚には触覚・圧覚・痛覚・冷覚・温覚などがあります。
痛みの感覚を受容するのは痛点といい、痛点が最も多く皮膚に分布しています。
痛みの感覚は身体の危険に深く関わっていて、感知したらすぐに反応する必要があるため痛みは感じやすくなっているのです。
皮膚の感覚受容点の分布量
【多い】 痛点 > 触点 > 圧点 > 冷点 > 温点 【少ない】
痛点に当たると痛い
痛点は1平方センチメートル1(1cm×1cm)の皮膚に対して100~200個の痛点が分布しているといわれています。
痛点自体の大きさは100マイクロメートルです。(100マイクロメートル=0.01cm=0.1mm)
鍼の太さは色々ありますが最も細いもので0.1mmです。(主に美容鍼などに使うものです)
痛点を肉眼で確認することは不可能ですので、細い針でもピンポイントで鍼が痛点に当たってしまうと当然痛いということになります。
また、中国鍼などの太い鍼を使う場合にはこの当選確率が上がるということなので、理屈上は鍼をさすことで感じる痛みの頻度は上がるということになります。
【例外】全く無痛の鍼手法もある
鍼灸治療にはさまざまな手法があり、刺さない鍼というものがあります。
これに関しては皮膚を突き破ることもないため痛くはありません。
特に乳幼児や小児などに行う小児鍼などでは、刺さない鍼による無痛の施術を行うのが一般的です。
身体の部位によって感じ方は違う
当たり前ですが、身体の部位によって感じ方は違います。
例えば、「弁慶の泣き所」などは他の身体の部位よりも格段にぶつけたときの痛みが強いですよね。
それと同様に鍼の刺激も感じやすい部分とそうでない部分があるというわけです。
神経が密集している場所は痛みを感じやすい
一般的には神経が密集している部位はより敏感ですので、鍼の刺激を強く感じやすいです。
顔面部
人体最大の神経密集部位のひとつは唇ですが、一般的に唇に鍼を刺すことはありません。
顔はコミュニケーションをとるために細やかな表情をつくるため神経が密集しております。
ですので、顔にたくさん鍼を刺すような美容鍼においてはかなり細い針を使用するのが一般的です。
手・足
手・足は「甲」よりも「手の平・足の裏」のほうが格段に強く刺激を感じます。
ちなみに、人差し指の先は唇よりも神経が密集しているので、刺すととても痛いです。
では、このような身体の部位に鍼をしないのかというと、そういうわけでもありません。
美容鍼は顔面部に鍼をたくさん刺しますし、手の平や足の裏などにも症状があれば患者さんの希望で鍼をすることもあります。
しかし、それが耐え難いほどの痛さというわけではありませんし、鍼の刺激を心地よいと感じる方もいます。
なにより感じ方は人によって違うということです。
痛みがあるところ
痛みがある部位は刺激に対して敏感になっていることもあります。
このような場所に鍼をすると極端に刺激を強く感じることがあります。
慢性的にこっているところ
痛みを伴わず慢性的にこっている部位などは鈍感になっていることが多いです。
人間は我慢していれば順応してしまうこともあり、首・肩こりなどある程度の期間我慢しているとつらさを感じなくなる人もいます。
このような場合には鍼を刺してもほとんど何も感じなかったりします。
逆に鍼治療を何度か受けているうちにコリが取れてくれば、感覚が正常化されて鍼の刺激を感じるようになるという人もいます。
「鍼の感じ方」を構成する要素
鍼を打たれたときの感じ方はかなり人それぞれです。
そのときに痛いと感じるかどうかには様々な要素が混じり合っているわけです。
それらの条件が変わるだけで最終的に痛く感じかどうかも変わってきます。
鍼の太さ
基本的に鍼は太くなればなるほど刺激量は上がります。
前述したように太い鍼のほうが痛点に当たる確率も高まります。
細ければ細いほど痛点に当たる確率は低くなり、切皮痛は起きづらくなります。
鍼の太さは流派や施術者の考え方で使い分けられているのが現状で、どの太さが一般的かということはありません。
当院の場合は、それぞれの患者様ごとに刺激量の調整を行うため02番~8番までの鍼を使い分けています。
【鍼の線径】
呼称 | 線径 |
02番 | 0.12mm |
01番 | 0.14mm |
1番 | 0.16mm |
2番 | 0.18mm |
3番 | 0.20mm |
5番 | 0.25mm |
8番 | 0.30mm |
基本的な日本の針の規格は8番あたりまでですが、特注や海外で流通している針などはこれ以上に太い針もあります。
施術者の腕
当たり前ですが、鍼を打つ人の腕前は重要です。
基本的には鍼を打つときの切皮痛はない方がよいので、鍼の刺入スピードや、鍼を刺す部位の周囲に圧迫をかけたりするなどの工夫をします。
余談ですが、これまで100名以上の鍼灸師の鍼を受けてきましたが、臨床歴と鍼の上手さは相関がないように思います。
鍼を受ける人の身体の感受性
感受性は人それぞれですが、大まかな要因の傾向があります。
年齢
基本的に若い人のほうが感受性は高く、鍼刺激に敏感です。
逆に高齢の方は感受性が低く、鍼刺激に鈍感です。
普段から身体を動かしているか
普段からスポーツなどをしている人のほうが感受性が高い傾向もあります。
刺激量が少なくても反応が良いことが多いです。
睡眠不足・疲労状態
睡眠不足や極度に疲れが溜まっているときなどは刺激に対して過敏になっていることがあります。
このような状態で鍼治療を受けるといつもより痛みを感じることがあります。
心理状態
不安や抑うつ状態などの心理的要因がある人は身体が敏感になっていることが多いです。
細い針でも刺激を強く感じる場合があります。
恐怖心が強いと痛みを感じやすい
痛みは心理的要素も多分に関係しており、鍼に対する恐怖心が強い人は痛みを感じやすくなります。
嫌々鍼を受けに来られる方が極稀にいらっしゅるのですが、鍼を打っていない段階で、鍼が打たれたと思って「痛い!」と叫ぶというようなこともありました。
鍼治療は「やってみたいな」と思ってから来ていただくほうが良いです。
安心して鍼治療を受けるためには、普段から鍼治療を愛好している方の体験談などを聞くのもオススメです。
結局、受けてみないとわからない
鍼灸治療は特殊な治療法のように思われますが、我が国でも平安時代から愛好されてきた治療法です。
当時の鍼に比べれば現代の鍼は品質も格段に良く、できるだけ痛みが出ないように加工されています。
「百聞は一見に如かず」とよく言いますが、鍼は実際に試してみるのが一番です。
「思ったよりも痛くなかったし、もっと早く鍼を受けていればよかった」という感想をいただくこともあります。
ぜひ一度、鍼灸治療を試してみてください!