このページの要点
- 検査で異常が出なくても、自律神経の乱れなどで胃の動き方と感じ方が変わり、機能性ディスペプシアの症状は出ます
- 鍼灸では、おなか側と背中側の両方に鍼をして、胃の動きと自律神経に働きかけます
- 通院は初期は週1回が目安。落ち着けば月1回程度に移行します
- 当院の推奨コースはダブルコース(料金は下に記載)
- 体重が減ってきた・嘔吐を繰り返す・吐血や黒っぽい便がある場合は、施術より先に医療機関へ
- 医科での治療と並行して受けていただけます
目次
検査で異常がないと言われた後の胃の不調
胃カメラを受けて異常なし、ピロリ菌も陰性。それでも胃の痛みが続く、食後に胃が重い、少し食べただけで満腹になる。薬を出してもらっても、飲んでいる間は少し楽で、やめると戻る。
検査で何も出なかったことで、かえって行き場がなくなる方は少なくありません。当院に来られる方の多くは、そこから自律神経の乱れから来ているのではないかと考えて鍼灸にたどり着いています。
吉祥寺メックス鍼灸院には、消化器内科で機能性ディスペプシアと診断された後も症状が続いている方が来院されています。このページは、すでに検査を受けて、機能性ディスペプシアと診断された方に向けて書いています。
なぜ検査で異常が出ないのに症状が出るのか
胃の不調というと胃そのものの問題に見えますが、機能性ディスペプシアで起きているのは、胃の「動き方」と「感じ方」の変調です。
原因は一つではありませんが、その一つとして自律神経の乱れが挙げられています。胃の働きは自律神経に制御されており、ストレスのほかに、睡眠不足、食生活の乱れ、喫煙、過労といった状態も自律神経の乱れにつながります。
胃の動きのリズムが乱れる
胃には、動きのリズムをつくる細胞があります。機能性ディスペプシアでは、この働きがうまくいっていないと考えられています。食べ物が入ってくると胃はふくらんで受け止め、少しずつ十二指腸へ送り出しますが、この流れが滞ると、少量で満腹になる、食後にいつまでも重いという症状として現れます。
同じ量でも強く感じる
もう一つが感じ方の変化です。機能性ディスペプシアでは胃の知覚が過敏になっており、少しの食事量でも胃の内圧が高まって、早期の満腹感やみぞおちの痛み・不快感として現れます。
検査で映る形に異常がなくても症状が出るのは、映らない部分——動きと感じ方——で起きているためです。
背中の張りについて
当院で来院された方に共通して見られるのは、症状よりストレス負荷が先行していること、そして背中の張りです。胃の不調を訴える方の背部を触ると、筋の緊張が明らかに残っていることが多くあります。胃腸の働きに関わる神経のうち、交感神経は背骨の両側を通っています。胃の不調と背中の張りは、患者さん本人の自覚としては別々でも、当院は同じ流れの中の症状として見ています。
胃の不調で、先に医療機関を受診していただきたいとき
まだ検査を受けていない方には、まず消化器内科での検査をお願いしています。 症状が似ていても原因が別にあれば、そちらの対処が先になるためです。ピロリ菌が陽性の場合も、除菌によって症状が変わることがあるため、除菌が済んでから鍼灸を検討していただくのが順序として妥当です。
診断がついた後でも、次のような変化が新しく出てきた場合は、施術よりも先に医療機関を受診してください。
- 体重が減ってきた
- 嘔吐を繰り返す
- 吐血、または黒っぽい便が出た
これらは、機能性ディスペプシアでは説明のつかない別の問題を示していることがあります。また、症状が急に変わった、以前より明らかに強くなったという場合も、施術を続けるより先に受診をご案内しています。
機能性ディスペプシアの鍼灸治療に期待できること
改善が期待できる症状
食後の胃もたれ、少量での満腹感、みぞおちの不快感や痛み、胸やけ、げっぷ——これらの症状そのものの軽減が対象です。胃の働きと自律神経のバランスに働きかけることで、症状の程度を下げ、出にくい状態をつくることを目指します。
実際の変化は、症状が出る回数が減る、出ても以前より軽く済むという形で現れることが多くあります。食後の重さが気にならなくなり、食べられる量が戻っていく方もいます。
研究で報告されていること
機能性ディスペプシアは、鍼灸が対象とする症状の中では研究の数が多い領域です。日本消化器病学会の診療ガイドラインにも、鍼灸療法についての項目が設けられています。
ただし、研究で報告されている結果は一致していません。胃の動きを助ける薬などと比較した研究では、差が認められなかったとする分析と、鍼のほうが良い結果を示したとする分析の両方があります。ガイドライン自身も、これらの研究は一件あたりの人数が少なく、内容を詳しく確認できない報告も多いことから、確かさの高い検討とは言い難いと評価しています。国内で有効性を示した比較研究は、まだ報告されていません。
結果が分かれる背景には、問いが二種類あることも関係しています。「偽の鍼と比べて本当に作用しているのか」を確かめる研究と、「薬と比べてどちらが上か」を確かめる研究は、別のことを調べています。後者は比べる相手の薬の効き方にも幅があるため、結果が振れやすくなります。
前者の問いについては、偽の鍼(刺した感覚はあるが作用しないようにした鍼)と比較した200人以上の試験で、食後のもたれや早期満腹感の改善が報告されています。
そして、比較研究では参加者全員に同じ部位・同じ刺激量・同じ回数で施術します。そうしなければ比較になりませんが、当院のやり方とは違います。同じ診断名でも、症状の出方も、背中の緊張の残り方も、ストレスのかかり方も人によって違います。当院は毎回の状態を確認しながら、鍼を刺す部位と刺激量を組み立て直します。研究で確認されている方向性を土台に、その日の身体に合わせて調整するというのが実際のやり方です。研究の数字がそのまま当院での経過を意味するわけではないのは、この違いによるところもあります。
もう一点、薬か鍼かという二者択一は、実際の選択ではありません。比較研究が答えているのは「どちらか一方を選ぶとしたらどうか」という問いですが、当院に来られる方は、胃の薬を続けながら鍼灸を受けている方が多くを占めます。その組み合わせで症状が落ち着いていく経過を、当院はよく見ています。
効果の出方には個人差があります。当院のカルテ記録では、半数以上の方が1回目の施術で症状の変化を報告されています。数回かけて落ち着いていく方もいます。
鍼が胃のはたらきに影響する仕組み
鍼が胃に対して何をしているのかは、症状がどう変わったかとは別に、測定によって確かめられている部分があります。以下は、どこまでが測定された内容で、どこからが推察なのかを分けて書いています。
鍼の刺激が胃に作用する経路(模式図。内田ら. 鍼刺激が上部・下部消化管に及ぼす影響. 全日本鍼灸学会雑誌. 2017;67(2) の内容を元に作図)
胃の動きに対して
胃の動きは、電気的な活動として体の外から記録できます。鍼、および鍼に電気を流す方法による刺激で、この活動が整う方向に変化したこと、胃の内容物が先へ送り出されるまでの時間が短くなったことが、複数の研究で測定されています。食べ物が入ってきたときに胃がふくらんで受け止められる量が増えたという報告もあります。
胃腸の動きに関わるホルモンの量が、刺激の後に変化することも測定されています。
ここまでは、胃の動き方そのものが変化していることを示しています。ただし、その変化が症状の軽減にどこまで直接つながっているのかは、まだ推察の段階です。
感じ方に対して
内臓の感覚の過敏さに関わる物質の量が、刺激の後に減っていたという報告があります。ただし動きの変化に比べると測定されている範囲は狭く、感じ方が変わる経路の説明としては推察の部分が大きくなります。
自律神経と脳のはたらきに対して
心拍のゆらぎから自律神経の状態を推定する方法で、刺激の後に副交感神経のはたらきが強まったことが測定されています。脳の活動を画像で確認した研究では、刺激によって広い範囲の活動が変化していました。不安や気分の落ち込みの程度が刺激の後に下がったという報告もあります。
胃の不調とストレス負荷が結びついて見える方に対して、当院が背中側や手足への施術を組み合わせているのは、この経路を想定しているためです。
これらの研究には限界もあります。測定の方法や評価の尺度が研究ごとに揃っておらず、実施された地域も限られています。仕組みとして分かってきていることと、目の前の症状がどう変わるかは、まだ完全にはつながっていません。
機能性ディスペプシアに対する当院の鍼灸治療
施術は、おなか側と背中側の両方に対して行います。
鍼灸には古くから、この症状によく使われてきたツボがあります。代表的なものが足三里(あしさんり)(膝の下の外側)・中脘(ちゅうかん)(みぞおちとへその間)・胃兪(いゆ)(背中側)です。これらへの刺激で実際に胃の活動に変化が起きることは、研究でも確認されています。おなか側と背中側の両方を扱うのは、これらが体の前後に分かれているためでもあります。
背中側は、胃腸の働きに関わる交感神経が背骨から出ていく領域にあたります。胃の不調を訴える方に残っている背部の緊張は、この領域の状態を反映していることが多く、ここへの施術が症状の変化として返ってくることがよくあります。うつ伏せの姿勢で、背中から腰にかけて鍼を刺します。あわせて、刺した鍼に低周波の電気を流す方法(鍼通電)を用います。
おなか側では、足三里を軸に組み立てます。胃腸の機能に対する効果が研究で繰り返し検証されている部位で、当院でもこの症状では必ず用い、必ず電気を流します。手にも自律神経の調整として鍼を用いますが、こちらは刺してすぐ抜きます。
腹部への施術も行いますが、こちらは電気を流さず、鍼を刺したまましばらくおく方法で調整します。胃の動きのリズムに働きかける部分です。
電気を流すのは、この症状に対する研究の多くが電気刺激を併用しており、自律神経の働きの変化が確認されているためです。ただし必ず行うものではありません。鍼の刺激に敏感な方の初回では電気を流しませんし、流さなくても十分な変化が出ている場合に無理に加えることもしません。
胃酸を抑える薬や胃の動きを助ける薬は、それぞれ特定の機能に直接働きかけます。鍼灸が作用する経路はそれとは異なります。入り口が違うため、医科での治療と並行して受けていただけます。
ほかに持病がある方、常用しているお薬がある方も来院されています。ほとんどの場合はそのまま受けていただけますが、刺激量の調整に関わることがあるため、問診でお知らせください。
機能性ディスペプシアで鍼灸に通う頻度と期間の目安
初期は週1回を目安にしています。1回目でどの程度変化があったかによって間隔を調整するため、状態によっては週2回をご提案することもあります。
鍼灸は1回で完結する施術ではありません。有効性を検証した研究では、週に2〜5回の施術を4週間ほど続ける形が多く取られています。施術を終えた後も1〜3か月ほど良い状態が続いたという報告もあります。当院はそこまでの頻度では組み立てませんが、はじめのうちは間隔を空けずに重ねる形にしています。
日常生活に支障がない状態まで戻れば、月1回程度のメンテナンスに移行します。症状が落ち着いた後は、ストレス負荷が強まるまで来院されないという方もいます。それで問題ありません。間隔を空けていくことを前提に組み立てています。
症状の出方によっては、数回では変化が分かりにくいこともあります。当院は3回を目安に施術の組み立てを見直します。 鍼を刺す部位を変える、頻度を調整する、医療機関での再評価をご提案する、といった対応になります。
5回ほど続けても変化が見えてこない場合は、そのことをそのままお伝えします。続けるかどうかはご本人に決めていただきます。当院から通院をお願いすることはありません。
前回の施術日から1か月以内(翌月の同じ日まで)にご来院いただくと、リピート割が適用されます。
機能性ディスペプシアの鍼灸治療のコースと料金
機能性ディスペプシアは、おなか側と背中側の両方に施術するため、両面を扱うダブルコースが対象になります。
ダブル両面施術・50分ほど
9,900円リピート割 8,800円
- 初回は 11,000円(9,900円+初見料 1,100円)
- リピート割は前回の施術日から1か月以内(翌月の同じ日まで)のご来院に適用されます
使用する鍼・手技・鍼に電気を流す方法については、コース詳細ページで写真つきでご覧いただけます。
機能性ディスペプシアで来院された方の経過
30代・女性/仕事が忙しい時期に胃の症状が強まった方
- 来院時
- 胃の痛み、寝つきの悪さ、片頭痛、肩こり、腰痛。消化器内科で診断・服薬中
- 通院
- 初回 → 2週間後 → 約1か月後
胃の痛みに加えて、寝つきの悪さ、片頭痛、肩こりと腰痛を併せて訴えて来院されました。来院の数か月前から症状が続いていて、仕事のストレスに思い当たるとのことでした。
2回目のとき「施術のあと数日間は胃の調子がよかった」との報告がありました。3回目には訴えの順番が変わり、腰痛と片頭痛のあとに胃、という順で話されるようになっていました。初回から3か月ほど経った時点では、仕事が落ち着いたこともあり、胃の症状も落ち着いた状態で経過しています。
その後は、生理痛や腰痛など胃以外の不調で、必要なときに来院されています。胃の症状がぶり返した時期もありましたが、その都度落ち着いています。
40代・女性/胸やけとゲップが続き、首肩のこりが強かった方
- 来院時
- 胸やけ、ゲップ、食欲の低下、少量での満腹感。消化器内科で診断・胃の薬と漢方薬を服用中
- 通院
- 週1回程度を2か月ほど・計8回で終了
ひと月半ほど前、重いものを持った翌日から胸やけとゲップが出るようになり、食欲の低下と、少し食べただけで満腹になる感じが続いていました。
初回にお身体を確認したところ、首と肩のこりがかなり強く出ていました。ご本人にはその自覚がありませんでした。
2回目は初回から6日後。頭痛が消え、首と肩が楽になり、食欲が出てきたとのことでした。一方でゲップと満腹感の出やすさは残っており、そこから数回はそこが中心の訴えでした。鍼の刺激に敏感な方だったため、以降は刺激を弱めに調整しています。
途中からは「首と肩のこりが和らぐと胃の症状も軽くなる」とご本人が話されるようになりました。転居のため、8回で終了となっています。
20代・男性/食事中の吐き気が3年続いていた方
- 来院時
- 食事中の吐き気が3年ほど継続。消化器内科で診断。消化器の持病あり・定期検査中。通っていた鍼灸院が閉院して来院
- 通院
- はじめの2回 → 以後2週間に1回程度 → 間隔が自然と延びる
食べている最中に気持ち悪くなる状態が3年ほど続いていました。消化器の持病があり、定期的に検査を受けながら経過を見ている方です。
はじめの2回で「調子がよくなった」との報告があり、その後は2週間に1回程度のペースで来院。3か月ほど経つと2か月近く症状が出ない時期が続くようになり、通院の間隔も自然と空いていきました。
その後も、緊張する場面が続いた時期には胃の症状が出ています。ただし数日でおさまることが多く、「念のために」という理由で来院されることが増えました。最終的にはメンテナンスとしての来院に移行しています。
機能性ディスペプシアの鍼灸についてよくある質問
- 鍼灸治療で機能性ディスペプシアは治りますか?
-
機能性ディスペプシアは、症状が落ち着いても検査の数値で「終わった」と確認できる症状ではありません。当院が目指しているのは、症状が出ていない状態が続くことです。お伝えできるのは、実際にどう経過したかになります。
食後のもたれやみぞおちの不快感が気にならない状態まで戻り、月1回程度のメンテナンスに移られた方も、症状が落ち着いた後は来院されなくなった方もいます。一方で、忙しい時期やストレスがかかる場面で症状が戻ることもあります。その場合も、以前より短い期間でおさまることが多いです。
変化が乏しい場合は3回を目安に組み立てを見直し、5回続けて変化がなければ、当院で続けるべきではないとお伝えします。
- どのくらいの頻度で通えばいいですか?
-
初期は週1回を目安にしています。
1回目の変化の程度によって間隔を調整し、日常生活に支障がない状態まで戻れば月1回程度に移行します。
ご予約
予約状況の確認とご予約は、予約ページから直接お取りいただけます。
このページは、機能性ディスペプシアに対する鍼灸について、当院の考え方と実際の経過をまとめたものです。個別の診断や治療方針の判断に代わるものではありません。服薬や検査については、かかりつけの医師にご確認ください。
参考文献
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この記事を書いた人
吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門の施術を行っています。
18歳の頃に鍼灸を初めて受け、その効果を実感し、その後鍼灸の道へ。以来さまざまな流派・技法の施術を受け続け、これまでに100名以上の施術者の鍼を経験してきた鍼灸愛好家でもあります。
- 国家資格:はり師・きゅう師(鍼灸師)
- 東京医療専門学校 鍼灸専科 卒業
- 上海中医薬大学 短期留学 推拿コース/解剖コース 修了
- 公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員
- 認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International)臨床研究オンライン学習プログラム 修了