インピンジメント症候群
このページの要点
- 症状の特徴
- 腕を上げる途中の決まった角度で肩が痛みます。肩の中の狭いすき間で腱がこすれて起こります。
- 当院の施術
- どの角度で痛むかを確かめ、肩の後ろ側から前側の筋肉に鍼をします。低周波の通電を基本的に併用します。
- 通い方の目安
- 動作の痛みが落ち着けばいったん終了します。3回続けて変化がなければ、その時点で見込みをお伝えします。
- 対象コース
- 横向きの姿勢で完結するため、スタンダードコースです(料金は下に記載)。
- 研究の状況
- 鍼灸の効果が確かめられた段階には至っていません。
- 先に受診を
- 転倒後に腕が上がらない、急な激痛、赤く腫れて熱をもつ場合は医療機関へ。
腕を上げる途中の、決まった角度で痛む肩
上の棚に手を伸ばす、髪を洗う、シャツの袖に腕を通す。腕を上げていく途中のある角度で肩に痛みが走り、そこを越えると楽になる。じっとしていればそれほど痛まないのに、動かした瞬間に引っかかる。整形外科で「インピンジメント症候群」「肩峰下滑液包炎」「腱板炎」といった名前を告げられ、湿布と安静で様子を見ている——その症状が、インピンジメント症候群です。夜、寝返りで痛んで目が覚める方もいます。
肩が重い・だるい・張るという不快感が中心で、腕を上げる動作そのものは痛まない場合、それは肩こりとして扱う症状です。腕を上げようとしても上がらず、人に持ち上げてもらっても動かない場合は、四十肩・五十肩など別の状態が考えられ、鍼灸より先に整形外科での評価をお願いしています。肩の痛みに加えて手や指のしびれがある場合は、首から来ている可能性があるため、首こりや頸肩腕症候群の状態に近いことがあります。握力の低下もある場合は、先に整形外科での評価をお願いしています。
夜の痛みに加えて、腕を上げる・後ろに回す動きそのものが制限されている場合については、四十肩・五十肩のページで説明しています。
肩の痛みで、先に医療機関を受診していただきたいとき
インピンジメント症候群の痛みは、動作のときに出る痛みが中心です。次に挙げる状態がある場合は、腱や骨そのものに損傷がある可能性や、別の病気の可能性があるため、鍼灸より先に整形外科などでの評価をお願いしています。
- 転倒や物を持ち上げたことをきっかけに、腕が上がらない・力が入らなくなった(腱の断裂や骨折の可能性)
- 何もしていないのに急に激しく痛みだした、または肩が赤く腫れて熱をもつ・発熱がある(腱への石灰の沈着、感染の可能性)
- 肩の痛みに手や指のしびれ、握力の低下をともなう
すでに整形外科で診断を受けている方でも、痛みの性質が急に変わった、明らかに強くなった、腕が上がらなくなった場合は、再受診をお願いしています。
インピンジメント症候群で鍼灸に通う頻度と期間の目安
インピンジメント症候群は、腕を上げる動作のときの痛みが落ち着けば、いったん終了とする方針です。区切りにしているのは、日常の動作で肩の痛みを思い出す場面が減り、施術のときに動作の痛みの話が出なくなったときです。痛みがゼロになることを条件にはしていません。
間隔は、初回の施術でどの程度変化があり、良い状態がどのくらい続いたかを見て決めます。動作のたびに痛む状態が続いている間は週1回を目安にし、痛む角度や場面が減ってきたら2〜3週に1回へ間隔を空けていきます。
施術は毎回同じではありません。その日の腕を上げる動きと触診で鍼をする部位を決め、刺激の強さも調整します。初回から3回ほど続けてもまったく変化が出ない場合は、その先も長い期間変化が出にくい可能性があることを、その時点でお伝えします。続けるか、いったん様子を見るかは、そのうえでご相談して決めます。変化はあっても乏しい場合は、5回を目安に同じ相談をします。変化があるかどうかは、ご本人の感覚を基準に、施術の前に伺います。施術のあとだけ楽になって数日で戻る、という場合は、変化がある側に数えます。
英国の肩関節の学会が2025年にまとめた診療の道筋では、手術以外の方法を続けて12週間たっても改善しない場合に専門医の評価を受ける、という線が示されています。当院で施術を続けている間にこの期間を超えそうな場合は、整形外科での再評価をご提案します。
動作の痛みが落ち着いたあと、背景に肩こりがある方は、そのこりを整える目的で1〜2か月に1回ほどの間隔で通うこともできます。この場合の施術は首肩のこりが中心になり、コースはスタンダードコースのまま変わりません。
インピンジメント症候群に対する当院の鍼灸治療
最初に確認するのは、どの動きの、どの角度で痛むかです。腕を横から上げる、前から上げる、後ろに回す、といった動きを実際にしていただき、痛みが出る角度と場所を確かめます。そのうえで肩のまわりを触診し、硬さの位置と深さから鍼をする部位を絞り込みます。この部位は人によって違うため、あらかじめ決められるものではありません。
鍼をする部位は、肩の後ろ側から肩甲骨のまわり、肩の前側、腕の付け根にかけての筋肉です。腕を上げるときに肩の骨を正しい位置に保つ筋肉と、腱が通るすき間のまわりで硬くなっている筋肉が対象になります。腱やすき間そのものに鍼を刺すのではなく、そのすき間を狭くしている筋肉の緊張をゆるめる、という考え方です。
施術は、痛む側を上にして横向きに寝た姿勢で行います。この姿勢だと、肩の後ろ側と前側の両方に、体の向きを変えずに鍼ができるためです。
刺す深さは部位ごとに決めていて、深く刺すほど効くというものではありません。こりの中心と判断した層に届く深さで止めます。
刺した鍼に低周波の電気を流す方法(鍼通電)を基本的に併用します。手では届かない深さの筋肉を直接動かせるためです。刺激に過敏な方には使いません。刺激の強さは、施術中に確認しながら調整します。
ほかに持病がある方、常用しているお薬がある方も受けていただけます。多くの場合はそのままで問題ありませんが、刺激量の調整に関わることがあるため、問診でお知らせください。
インピンジメント症候群の鍼灸治療のコースと料金
インピンジメント症候群の施術は、横向きに寝た姿勢のまま、肩の後ろ側から前側までの筋肉に鍼をします。体の向きを変えずに1つの姿勢で完結するため、スタンダードコースが対象になります。
スタンダード
8,800円リピート割 7,700円
- 初回は 9,900円(施術料 8,800円+初見料 1,100円)初見料は初めてのご来院時のみ
- リピート割は前回の施術日から1か月以内(翌月の同じ日まで)のご来院に適用されます
初回は問診と動きの確認がありますが、所要時間は同じく40分ほどです。
肩の痛みに加えて、首や背中、腰など別の症状もあわせて施術する場合は、姿勢を変えて両方に施術することになり、ダブルコースが対象になることがあります。その場合の内容は当日の問診でご相談して決めます。コースの目安は、いくつかの質問に答えるコース診断ツールでも確かめられます。
使用する鍼・手技・鍼に電気を流す方法については、コース詳細ページで写真つきでご覧いただけます。
当院は保険取扱いのない、自費の鍼灸院です。
なぜ、決まった角度でだけ肩が痛むのか
肩には、腕の骨の上端と、その上に屋根のようにかぶさる肩甲骨の一部との間に、狭いすき間があります。このすき間を、腕を上げる腱と、腱がなめらかに動くためのクッションになる袋状の組織が通っています。腕を上げていくと、この腱とクッションが屋根の骨に近づきます。すき間が狭くなっていると、ある角度でそこに挟まれてこすれ、痛みが出ます。その角度を越えると挟まれなくなるため、痛みが抜けます。これが「決まった角度でだけ痛む」理由です。
同じ状態に、医療機関では「肩峰下疼痛症候群」「肩峰下滑液包炎」「腱板炎」といった名前がつくこともあります。挟まれる場所と、傷んでいる組織のどちらに着目するかで名前が変わりますが、腕を上げる途中で痛むという症状は共通しています。
すき間が狭くなる原因のひとつが、肩甲骨の位置と動きです。画面に向かう姿勢が長く続くと、肩甲骨は外側と前側にずれた位置で固まり、腕を上げるときに本来いっしょに回るはずの動きが小さくなります。屋根の側が動かないまま腕の骨だけが上がるため、すき間はより狭くなります。腕を上げる作業や運動を繰り返す方では、腱そのものが使いすぎで傷んで厚くなり、それがすき間を狭くします。
湿布や表面のマッサージで動作の痛みが変わりにくいのは、痛みの出どころが表面の筋肉ではなく、骨の下の深い位置にある腱とクッション組織であることと、「動かしたときに挟まれる」という動作の問題であることの2つによります。じっとしているときに楽になっても、腕を上げれば同じ場所で挟まれます。
インピンジメント症候群の鍼灸治療に期待できること
改善が期待できる症状
当院が対象にしている中心は、腕を上げる動作のときの肩の痛みの軽減と、動かしやすさの改善です。棚の上に手が届きにくい、後ろに手を回すと痛む、寝返りで目が覚める、といった場面の痛みがここに含まれます。区切りにしているのは、日常の動作で痛みを思い出す場面が減り、施術のときに動作の痛みの話が出なくなることです。
鍼をするのは、すき間を狭くしている肩まわりの筋肉です。腱の断裂、骨の形そのもの、腱に沈着した石灰といった、構造そのものを変える施術ではありません。強く腫れて熱をもっている時期も対象にしていません。
肩の後ろ側から肩甲骨のまわりにかけての硬さは、この症状に肩こりが重なっている方に見られます。その場合は肩こりの部分もあわせて施術の対象にします。
すでに整形外科で診断を受け、注射やリハビリを受けている方も受けていただけます。鍼灸の対象は動作のときの痛みの軽減で、診断や治療の内容を当院が変えるものではありません。整形外科での治療と並行して受けていただけます。
効果の出方には個人差があります。施術後は一時的にだるさが出ることがあり、通常は数時間から1日ほどでおさまります。
研究で報告されていること
インピンジメント症候群に対する鍼灸は、研究の上では、鍼灸そのものの効果として確かめられた段階に至っていません。英国の肩関節の学会が2025年にまとめた診療の道筋でも、鍼灸を推奨するだけの根拠は足りない、という位置づけです。運動療法にあわせて、本物の鍼と比較のための偽の鍼を比べた試験では、腕の動かしやすさや生活のしやすさでは本物の鍼を受けた側に差が出た一方、痛みそのものの変化は両者で同じ程度でした。当院はこの状況をふまえたうえで、肩まわりの筋肉の緊張をゆるめることを目的に施術をしています。
インピンジメント症候群の鍼灸についてよくある質問
- 整形外科で注射やリハビリを受けています。並行して鍼灸を受けてもよいですか?
-
問題ありません。整形外科の注射やリハビリと鍼灸は入り口が違い、注射は炎症や痛みそのものに、リハビリは肩甲骨の動かし方や筋力に、鍼は肩まわりで硬くなっている筋肉の緊張に働きかけます。注射を受けた直後の肩は、腫れや痛みの解釈が難しくなるため、注射を受けた日と部位を問診でお知らせください。注射やリハビリは、主治医の指示どおり続けてください。
- 痛い腕は動かしたほうがよいですか。休ませたほうがよいですか?
-
整形外科で運動療法や安静の指示が出ている場合は、そちらを優先してください。指示が出ていない場合の目安としてお伝えしているのは、痛みが走る角度まで無理に腕を上げる動作は繰り返さず、痛まない範囲の日常の動作は続けてかまわない、ということです。腕を上げると痛むから腕を使わない、という状態が長く続くと、肩まわりの筋肉がさらに硬くなることがあります。
ご予約
ご来院当日の流れ、お着替え、お支払い方法については、「初めての方へ」のページで説明しています。
予約状況の確認とご予約は、予約ページから直接お取りいただけます。
このページは、インピンジメント症候群に対する鍼灸について、当院の考え方をまとめたものです。個別の診断や治療方針の判断に代わるものではありません。検査や治療については、かかりつけの医師にご確認ください。
参考文献
- Pandey RA, Singh HP, et al. (BESS Subacromial Pain Working Group). BESS Patient Care Pathway: Subacromial Pain. Shoulder & Elbow. 2025;17(6):713-724. DOI
- Karamanlioglu DS, Kaysin MY, Begoglu FA, et al. Effects of acupuncture on pain and function in patients with subacromial impingement syndrome: a randomized sham-controlled trial. Integrative Medicine Research. 2024;13(2):101049. DOI
- Trinh K, Belski N, Kuhad A, Gibson C. The Efficacy of Acupuncture on Shoulder for Pain Intensity, Functional Status, and General Quality of Life in Adults: A Systematic Review. Medical Acupuncture. 2026;38(3):200-210. DOI
