鍼灸治療で「消毒しない」って大丈夫?

今回のご質問は「他の鍼灸院で鍼を受けた際に消毒をされなかったけれど、それはいいのか?」という内容です。

他の鍼灸院で鍼を受けたときに、消毒をされませんでした。
消毒しなくていいのかを聞いたら「消毒は意味がない」と言われました。
本当にそれで大丈夫なんでしょうか?

鍼をする箇所は消毒しないといけません。お灸をする箇所の消毒は任意です。

目次

どうして鍼をする場所は消毒するの?

感染予防のために鍼をする前には施術野を消毒します。

注射針を刺す際には皮膚の脂肪や汚れなどを除き、穿刺部への細菌類の感染を防ぐために消毒が行われています。
それと同様の理由で、鍼治療も皮下に鍼をするわけですから、感染予防のために施術野の消毒が重要です。

当院ではもちろん鍼施術前に施術する箇所の消毒を行っています。

消毒は意味がない?

近年では、皮下注射などで消毒を省略しても問題ないという研究や意見もあります。
特に自己注射や清潔な環境では、消毒しなくても感染率が非常に低いというデータも報告されています。

しかし、現在の日本の医療現場や鍼灸業界では、感染予防の観点から引き続き消毒が推奨されています。

ガイドラインではどう書かれている?

公益社団法人 全日本鍼灸学会の「鍼灸安全対策ガイドライン2025 年版」においては消毒に関して以下のように記載されています。

鍼施術を行う場合は、施術野を消毒しなければならない。一方、灸施術における施術野の消毒については、法律に定められておらず、必要とする根拠がないため、本項目では言及しない。

鍼灸安全対策ガイドライン2025年版(改訂第2版)

つまり、鍼を打つときには消毒は必須、お灸についてはケースバイケースとされています。

法律でも「消毒の義務」が明記されています

実は、鍼灸師の法律でもある「あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)」において、鍼施術時の消毒が義務として明記されています。

第六条 はり師は、はりを施そうとするときは、はり、手指及び施術の局部を消毒しなければならない。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

鍼治療で消毒されなかった場合

大丈夫か心配な方へ

鍼治療を受けた後に「消毒されなかったけど大丈夫かな…」と不安に感じている方は、まずご自身の体調や皮膚の状態をチェックしてみてください。

異常がなければ基本的には心配ありません

鍼の刺激によって、多少の赤みや軽い内出血が起こることはありますが、強い腫れ・熱感・ズキズキするような痛みがなければ、感染の心配はほとんどありません。

こんな症状があれば、早めに医療機関や施術者へ相談を

  • 鍼を打った箇所が熱を持って赤く腫れている
  • ズキズキした痛みや膿のような液体が出てくる
  • 数日経っても 痛みや違和感が引かない

このような場合は、ごくまれに「局所感染」などのトラブルが起きている可能性もあるため、施術を受けた鍼灸院または皮膚科などの医療機関に相談しましょう。

次回以降はどうするか

同じ鍼灸院で施術を受ける予定がある場合には、施術前に「鍼をする部位の消毒をお願いできますか?」と一言伝えるほうが良いと思います。

アルコールアレルギーの場合は?

鍼治療では一般的にアルコール綿花で消毒を行いますが、アルコールアレルギーがある方には別の消毒薬(クロルヘキシジンなど)を使用することも可能です。

アルコールアレルギーがあり、問診時に確認されなかった場合には施術者に申告したほうが良いです。

まとめ

  • 鍼をする箇所の消毒は必須です
  • 法律やガイドラインでも消毒の必要性が定められています
  • アルコールに不安がある場合は他の方法で対応可能です
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この記事を書いた人

佐藤長快のアバター 佐藤長快 鍼灸師

吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門で施術を行なっています。
18歳の頃から鍼灸に定期的に通っている鍼灸愛好家。様々な鍼灸治療を受けるのも好きで、これまでに100人以上の施術者の鍼を受けてきました。

はり師+きゅう師=鍼灸師(国家資格)
東京医療専門学校鍼灸専科 卒業. せんねん灸セルフケアサポーター. 公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員. 上海中医薬大学 短期留学 推拿コース修了. 上海中医薬大学 短期留学 解剖コース修了. メンタルケアスペシャリスト養成講座 基礎課程修了. 認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International) e-Learning 型 Midcareer Academic learning Program 臨床研究オンライン学習プログラム修了.

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