変形性股関節症

このページの要点

症状の特徴
歩き出しや立ち上がりで脚の付け根が痛みます。画像の変形の程度と痛みの強さは一致しません。
当院の施術
関節ではなく、お尻の横側と脚の付け根の奥の筋肉に鍼をします。低周波の通電を基本的に併用します。
通い方の目安
痛みと動かしやすさを保ちながら間隔を延ばします。3回続けて変化がなければ、その時点で見込みをお伝えします。
対象コース
うつ伏せと仰向けの両方から鍼をするため、ダブルコースです(料金は下に記載)。
研究の状況
変形性股関節症への鍼灸は、効果が確かめられた段階には至っていません。
先に受診を
転倒後に体重をかけられない、発熱を伴う急な激痛、夜間に強まる痛みは医療機関へ。
目次

「手術はまだ」と言われてからの、股関節の痛み

整形外科でX線を撮り、「変形性股関節症」「臼蓋(きゅうがい)形成不全」と言われた。手術の段階ではなく、体重管理と経過観察を指示されている。それでも、椅子から立ち上がる、朝の歩き出し、階段を上るたびに脚の付け根が痛む。靴下をはく、足の爪を切るといった、股関節を深く曲げる動作がしづらくなってきた。日本では40〜50代で症状が出はじめる方が多く、「まだ若いのに」と感じている方も含みます。

変形性股関節症と診断された方だけを対象にした施術の実績は、当院にはまだ多くありません。そのため、通い方の目安は、施術の方針としてあらかじめ定めているものです。

まだ受診していない方は、順序として先に画像での評価をお願いしています。画像で大きな異常はないと言われた方の股関節の痛みについては、股関節痛のページで説明しています。

股関節の痛みで、先に医療機関を受診していただきたいとき

まだ整形外科で画像の検査を受けていない方は、鍼灸より先に、股関節の状態を画像で確認していただくようお願いしています。変形の程度や骨の形は触診では分からず、そこが分かってはじめて、鍼灸が対象にできる範囲を判断できるためです。

すでに診断を受けている方でも、次の状態が新しく出てきた場合は、通常の変形の進み方とは別の事情が考えられるため、鍼灸より先に整形外科での評価をお願いしています。

  • 転倒やつまずきのあと、または軽い動作のあとに急に痛みが強くなり、脚に体重をかけられなくなった(骨粗鬆症のある方は特に)
  • 発熱を伴って急に激しく痛みだし、股関節をほとんど動かせない
  • 安静にしていても、夜間に痛みが強まる。原因のはっきりしない体重の減少がある

歩くとふくらはぎがしびれる、両脚に症状が出る、という場合は、股関節より腰の神経が関わっていることが多く、腰の評価が先になります。

数週間から数か月の単位で痛みや動かしにくさが急に進んだ場合も、再受診をお願いしています。

変形性股関節症で鍼灸に通う頻度と期間の目安

変形性股関節症では、関節の変形そのものは進んでいく性質のものです。そのため当院では、痛みを取りきって終わりにするのではなく、痛みと動かしやすさを保ちながら、施術の間隔を延ばしていく設計にしています。区切りの目安は、歩き出しや立ち上がりで痛みを思い出す場面が減り、日常の動作が続けられている状態が保てていることです。

間隔は、初回の施術でどの程度変化があり、良い状態がどのくらい続いたかを見て決めます。動作のたびに痛む状態が続いている間は週1回を目安にし、痛む場面が減ってきたら2〜4週に1回へ間隔を空けていきます。その間隔で良い状態が保てていれば、そのまま続けることも、いったん終了することもできます。

施術は毎回同じではありません。その日の股関節の動きと触診で鍼をする部位を決め、刺激の強さも調整します。初回から3回ほど続けてもまったく変化が出ない場合は、その先も長い期間変化が出にくい可能性があることを、その時点でお伝えします。変形の程度が進んでいる方では、筋肉の緊張をゆるめても痛みの変化が小さいことがあり、この見込みを早めにお伝えするのはそのためです。続けるか、いったん様子を見るかは、そのうえでご相談して決めます。変化はあっても乏しい場合は、5回を目安に同じ相談をします。変化があるかどうかは、ご本人の感覚を基準に、施術の前に伺います。施術のあとだけ楽になって数日で戻る、という場合は、変化がある側に数えます。

整形外科での定期的な画像の確認は、当院に通われている間も続けてください。変形の進み方は施術では分からないためです。

変形性股関節症に対する当院の鍼灸治療

最初に確認するのは、どの動きで痛むかです。脚を横に開く、股関節を深く曲げる、片脚で立つ、といった動きを実際にしていただき、痛みが出る場面と場所を確かめます。そのうえで、お尻の横側から脚の付け根にかけてを触診し、硬さの位置と深さから鍼をする部位を絞り込みます。この部位は人によって違うため、あらかじめ決められるものではありません。

鍼をする部位は、大きく2か所です。1つは、股関節の骨の出っ張りのまわりにある、お尻の横側の筋肉(中殿筋・小殿筋)。片脚で体重を支えるたびに骨盤を水平に保つ筋肉で、関節をかばう動きが続くと硬くなりやすい場所です。もう1つは、脚の付け根の奥、骨盤の内側から太ももの骨につながる筋肉。股関節を曲げる動きを担っていて、ここが硬いと歩き出しや立ち上がりで痛み、靴下をはく動作がしづらくなります。股関節は体の表面から深い位置にあり、関節の中に鍼を入れる施術ではありません。関節を動かしている筋肉の緊張をゆるめる、という考え方です。

施術は、うつ伏せと仰向けの両方の姿勢で行います。うつ伏せでお尻の横側と後ろ側に、仰向けで脚の付け根から太ももに鍼をします。お尻の横側は、うつ伏せと仰向けで届く角度が変わるため、どちらの姿勢でも鍼をします。

刺す深さは部位ごとに決めていて、深く刺すほど効くというものではありません。こりの中心と判断した層に届く深さで止めます。

刺した鍼に低周波の電気を流す方法(鍼通電)を基本的に併用します。手では届かない深さの筋肉を直接動かせるためです。刺激に過敏な方には使いません。刺激の強さは、施術中に確認しながら調整します。

ほかに持病がある方、常用しているお薬がある方も受けていただけます。多くの場合はそのままで問題ありませんが、刺激量の調整に関わることがあるため、問診でお知らせください。

変形性股関節症の鍼灸治療のコースと料金

変形性股関節症の施術は、お尻の横側と後ろ側にはうつ伏せで、脚の付け根から太ももには仰向けで鍼をします。体の向きを変えて両方の姿勢で施術するため、ダブルコースが対象になります。

ダブル両面施術・50分ほど

9,900円リピート割 8,800円

  • 初回は 11,000円(施術料 9,900円+初見料 1,100円)初見料は初めてのご来院時のみ
  • リピート割は前回の施術日から1か月以内(翌月の同じ日まで)のご来院に適用されます

初回は問診と動きの確認がありますが、所要時間は同じく50分ほどです。

痛む側をかばうことで出ている腰や反対側の膝の負担も、同じダブルコースの中であわせて施術します。その日の施術の配分は、問診でご相談して決めます。コースの目安は、いくつかの質問に答えるコース診断ツールでも確かめられます。

使用する鍼・手技・鍼に電気を流す方法については、コース詳細ページで写真つきでご覧いただけます。

当院は保険取扱いのない、自費の鍼灸院です。

変形があっても、痛みの出方が人によって違う理由

股関節は、骨盤側の受け皿に太ももの骨の丸い先端がはまる形の関節です。変形性股関節症は、この関節の軟骨がすり減り、骨の形が変わっていく状態を指します。日本では、生まれつき骨盤側の受け皿が浅い「臼蓋形成不全」に由来する例が大半で、症状が出てくるのは40〜50代が中心です。

ただし、画像に写る変形の程度と、痛みの強さは必ずしも一致しません。画像で変化があっても痛みのない方は相当数いて、逆に、変形が軽くても強く痛む方もいます。この差を生んでいるのが、関節を動かしている筋肉の状態です。

股関節は、片脚で体重を支えるたびに、お尻の横側の筋肉が骨盤を水平に保ち、脚の付け根の奥の筋肉が脚を前に振り出します。関節に痛みや違和感があると、これらの筋肉は関節を守ろうとして力を抜けなくなり、硬いまま働き続けます。硬くなった筋肉は動き始めに引きつるため、歩き出しや立ち上がりの最初の数歩で痛み、動いているうちに薄れる、という出方になります。股関節を深く曲げる動作がしづらくなるのも、関節の変形だけでなく、脚の付け根の奥の筋肉が伸びなくなっていることが関わっています。

痛む側をかばう歩き方が続くと、負担は腰と反対側の膝に移ります。変形性股関節症の方の腰痛や膝の痛みは、この連鎖で出ていることがあります。

当院が施術の対象にしているのは、この「変形に対して筋肉が硬くなっている部分」です。変形そのものに働きかける施術ではありません。

変形性股関節症の鍼灸治療に期待できること

改善が期待できる症状

当院が対象にしている中心は、関節のまわりの筋肉の緊張から来ている、動作のときの痛みの軽減と、動かしやすさの改善です。歩き出しや立ち上がりの痛み、股関節を深く曲げる動作のしづらさ、痛む側をかばうことで出ている腰や膝の負担がここに含まれます。

鍼をするのは、関節を動かしている筋肉です。すり減った軟骨や、変わってしまった骨の形を戻す施術ではありません。変形の進行を止める施術でもありません。手術が必要かどうかの判断は、整形外科の領域です。腰の神経から来ている脚の痛みやしびれも、股関節への施術では変わりません。

変形の程度が進んでいる方では、筋肉の緊張をゆるめても痛みの変化が小さいことがあります。その場合は、3回を目安に見込みをお伝えします。

整形外科で経過観察や運動療法の指示を受けている方は、その指示を続けながら受けていただけます。鍼灸の対象は筋肉由来の痛みの軽減で、診断や治療の内容を当院が変えるものではありません。

効果の出方には個人差があります。施術後は一時的にだるさが出ることがあり、通常は数時間から1日ほどでおさまります。

研究で報告されていること

変形性股関節症に対する鍼灸は、研究の上では、鍼灸そのものの効果として確かめられた段階に至っていません。本物の鍼と、刺さない偽の鍼を比べた試験は数が少なく、痛みと動かしやすさのどちらでも、両者の差は示されていません。日本の整形外科の診療ガイドライン(2024年)は、股関節症への鍼灸について「報告がないため効果は不明」としていて、推奨する・しないの判断そのものが示されていない状態です。当院はこの状況をふまえたうえで、関節のまわりの筋肉の緊張をゆるめることを目的に施術をしています。

変形性股関節症の鍼灸についてよくある質問

整形外科で手術をすすめられています。鍼灸で手術を避けられますか?

避けられません。手術が必要かどうかは、画像に写る変形の程度と生活への支障から整形外科が判断するもので、鍼灸はその判断材料を変える施術ではありません。当院が対象にしているのは、関節のまわりの筋肉の緊張から来ている痛みで、手術までの期間や手術を見送っている間の痛みの軽減を目的に、整形外科と並行して受けていただくことはできます。手術の時期や要否についての相談は、主治医にお願いしています。

体重を減らすように、運動をするように言われています。鍼灸院で指導はありますか?

当院では運動や体重管理の指導は行っていません。整形外科や理学療法で指示が出ている場合は、そちらを優先してください。当院がお伝えしているのは、施術のあとに痛みが軽くなっている間は、指示されている運動を続けやすくなることがある、という点までです。痛みが出るから動かさない、という状態が長く続くと、股関節のまわりの筋肉はさらに硬くなります。

ご予約

ご来院当日の流れ、お着替え、お支払い方法については、「初めての方へ」のページで説明しています。

予約状況の確認とご予約は、予約ページから直接お取りいただけます。

このページは、変形性股関節症に対する鍼灸について、当院の考え方をまとめたものです。個別の診断や治療方針の判断に代わるものではありません。検査や治療については、かかりつけの医師にご確認ください。

参考文献
  • Manheimer E, Cheng K, Wieland LS, et al. Acupuncture for hip osteoarthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2018;(5):CD013010. DOI
  • 日本整形外科学会・日本股関節学会 変形性股関節症診療ガイドライン策定委員会 編. 変形性股関節症診療ガイドライン 改訂第3版. 南江堂; 2024.
  • Iidaka T, Muraki S, Akune T, et al. Prevalence of radiographic hip osteoarthritis and its association with hip pain in Japanese men and women: the ROAD study. Osteoarthritis and Cartilage. 2016;24(1):117-123. DOI

この記事を書いた人

佐藤長快

佐藤長快

鍼灸師

吉祥寺メックス鍼灸院で鍼灸専門の施術を行っています。

18歳の頃に鍼灸を初めて受け、その効果を実感し、その後鍼灸の道へ。以来さまざまな流派・技法の施術を受け続け、これまでに100名以上の施術者の鍼を経験してきた鍼灸愛好家でもあります。

  • 国家資格:はり師・きゅう師(鍼灸師)
  • 東京医療専門学校 鍼灸専科 卒業
  • 上海中医薬大学 短期留学 推拿コース/解剖コース 修了
  • 公益社団法人 全日本鍼灸学会 正会員
  • 認定NPO法人 健康医療評価研究機構(iHope International)臨床研究オンライン学習プログラム 修了
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