過敏性腸症候群
このページの要点
- 症状の特徴
- 大腸カメラで異常がなくても、緊張する場面で腹痛と便意が起こり、便の状態が安定しません。
- 当院の施術
- 手足への低い頻度の鍼通電と、下腹部・背中から腰への鍼を組み合わせます。
- 通い方の目安
- 症状の出る日を減らしながら間隔を延ばします。3回続けて変化がなければ、その時点で見込みをお伝えします。
- 対象コース
- おなか側と背中側の両方に鍼をするため、ダブルコースです(料金は下に記載)。
- 研究の状況
- 過敏性腸症候群への鍼灸は、効果が確かめられた段階には至っていません。研究の大半は下痢型を対象にしています。
- 先に受診を
- 血便や発熱、意図しない体重減少、50歳以降に初めて出た症状は医療機関へ。
通勤中や会議の前に、決まっておなかが痛くなる方へ
朝の電車の中、大事な会議の前、外出先でトイレの場所が分からないとき——そうした場面で決まっておなかが痛くなり、急な便意に追われる。ある時期は下痢が続き、別の時期は便秘に傾く。消化器内科で大腸カメラや血液の検査を受けても異常はなく、「過敏性腸症候群」と言われて整腸剤や下痢止めを出してもらった。飲んでいる間は少し楽でも、緊張する場面になるとやはり症状が出る。
胃もたれや、少し食べただけで満腹になるといった胃の症状が中心の方については、機能性ディスペプシアのページで説明しています。便通の乱れが、だるさや眠りの浅さ、動悸などと一緒に出ている方については、自律神経失調症のページで説明しています。
おなかの痛みと便通の乱れで、先に医療機関を受診していただきたいとき
まだ消化器内科を受診していない方は、鍼灸より先に受診をお願いしています。過敏性腸症候群は、腹痛と便通の変化が続いていて、検査で腸に病気が見つからないときにつく診断名です。腸に病気がないことが分かってはじめて、鍼灸が対象にできる範囲を判断できます。
すでに診断を受けている方でも、次の状態が新しく出てきた場合は、過敏性腸症候群とは別の事情が考えられるため、鍼灸より先に消化器内科での再評価をお願いしています。
- 血便が出た。発熱を伴う
- 食事の量を変えていないのに、体重が減ってきた
- 50歳を過ぎてから初めて症状が出た。または、大腸の病気にかかったことがある、家族にかかった人がいる
夜間に目が覚めるほどの腹痛が続く場合、数週間の単位で症状の出方が急に変わった場合も、再受診をお願いしています。
過敏性腸症候群で鍼灸に通う頻度と期間の目安
過敏性腸症候群は、日によって症状の出方が大きく変わります。調子のよい日が数日続いたあとに、緊張する予定が入ると戻る、ということが起こります。そのため当院では、施術のあとに一時的に楽になったかどうかではなく、症状が出た日の数と、外出先での困り方が、数週間の単位で減っているかを基準に見ます。区切りの目安は、トイレの場所を先に確かめなくても外出できる日が増え、便の状態が安定してきていることです。
間隔は、初回の施術でどの程度変化があり、よい状態がどのくらい続いたかを見て決めます。緊張する場面のたびに症状が出ている間は週1回を目安にし、症状の出る日が減ってきたら2〜4週に1回へ間隔を空けていきます。その間隔でよい状態が保てていれば、そのまま続けることも、いったん終了することもできます。
施術は毎回同じではありません。その日の手足と腹部・背中の状態を触診で確かめ、鍼をする部位と刺激の強さを調整します。初回から3回ほど続けてもまったく変化が出ない場合は、その先も変化が出にくい可能性があることを、その時点でお伝えします。不安や緊張がとくに強い方では、鍼灸だけでは変化が小さいことがあり、この見込みを早めにお伝えするのはそのためです。続けるか、いったん様子を見るかは、そのうえでご相談して決めます。変化はあっても乏しい場合は、5回を目安に同じ相談をします。変化があるかどうかは、ご本人の感覚を基準に、施術の前に伺います。
過敏性腸症候群に対する当院の鍼灸治療
最初に確認するのは、手足と、下腹部から背中・腰にかけての状態です。触って見ているのは、押すと痛む場所、硬く縮んでいる場所、それとは逆に張りがなく力の入らない場所です。鍼をする場所は、この触診で決めます。
施術は仰向けから始めます。まず手足に鍼をして、刺した鍼に低い頻度で電気を流します(鍼通電)。1秒に1〜3回ほどのゆっくりした間隔で、電気に合わせて筋肉がトントンと軽く収縮する程度の刺激です。手足への刺激が、神経を通って脳や脊髄に届き、そこから自律神経のはたらきに影響する、という経路を使うためです。症状が強く出ている時期にはこの刺激を不快に感じる方がいます。その場合は電気を流しません。
つづいて下腹部に鍼をします。ここは電気を流さず、浅く刺した鍼をしばらくおく方法で調整します。大腸の動きに働きかけることをねらう部位です。
うつ伏せになっていただき、背中から腰に鍼をします。腸のはたらきに関わる神経が背骨から出入りしている領域で、腹痛や便通の乱れが続いている方では、この高さの筋肉に緊張が残っていることが想定されます。首や肩のこり、眠りの浅さも併せてお持ちの方には、その部位への施術を同じ時間の中で行います。
整腸剤や下痢止め、便をやわらかくする薬は、腸の中の環境や動きに直接働きかけます。鍼灸が作用する経路はそれとは異なります。入り口が違うため、消化器内科での治療と並行して受けていただけます。
ほかに持病がある方、常用しているお薬がある方も受けていただけます。ほとんどの場合はそのままで問題ありませんが、刺激量の調整に関わることがあるため、問診でお知らせください。
過敏性腸症候群の鍼灸治療のコースと料金
過敏性腸症候群の施術は、仰向けで手足と下腹部に、うつ伏せで背中から腰に鍼をします。おなか側と背中側の両方に施術するため、ダブルコースが対象になります。
ダブル
9,900円リピート割 8,800円
- 初回は 11,000円(施術料 9,900円+初見料 1,100円)初見料は初めてのご来院時のみ
- リピート割は前回の施術日から1か月以内(翌月の同じ日まで)のご来院に適用されます
初回は問診と触診に時間をかけますが、所要時間は同じく50分ほどです。
首や肩のこり、眠りの浅さがある場合も、同じダブルコースの中であわせて施術します。その日の施術の配分は、問診でご相談して決めます。コースの目安は、いくつかの質問に答えるコース診断ツールでも確かめられます。
使用する鍼・手技・鍼に電気を流す方法については、コース詳細ページで写真つきでご覧いただけます。
当院は保険取扱いのない、自費の鍼灸院です。
検査で異常がないのに、腹痛と便通の乱れが続く理由
過敏性腸症候群は、大腸カメラで腸の壁を見ても炎症や腫瘍が見つからないのに、腹痛と便通の変化が続く状態を指します。便の状態によって、下痢が中心の下痢型、便秘が中心の便秘型、両方をくり返す混合型に分けられます。同じ人でも時期によって型が変わることがあります。
検査に映らない場所で起きているのは、腸の「動き方」と「感じ方」の変調です。腸は、食べ物を送り出すために自分のリズムで動いています。この動きが速くなりすぎると下痢に、遅くなりすぎると便秘に傾きます。もう一つが感じ方の変化で、腸がわずかにふくらんだだけで痛みとして感じてしまう状態です。健康な人なら気づかない程度のガスや便の移動が、はっきりした腹痛になります。
この二つを大きく左右しているのが、脳と腸のあいだの信号のやりとりです。腸は脳と神経でつながっていて、緊張や不安があると、その信号が腸の動きと感じ方の両方に影響します。通勤中や会議の前など、「ここでおなかが痛くなったら困る」という場面ほど症状が出やすいのは、この経路が働いているためだと考えられています。逆に、腹痛が続くこと自体が緊張を強め、次の症状につながる、という循環も指摘されています。
当院がこの症状で、下腹部だけでなく手足や背中への施術を組み合わせているのは、この脳と腸のあいだの経路に働きかけることを想定しているためです。ただし、この経路に鍼がどのように作用するかは、動物での実験が中心で、人での確認はまだ限られています。
過敏性腸症候群の鍼灸治療に期待できること
改善が期待できる症状
当院が対象にしている中心は、腹痛が出る日の数と、便通の乱れの程度を減らしていくことです。緊張する場面で決まって起こる腹痛と便意、下痢と便秘のくり返し、それに伴う外出先での不安がここに含まれます。あわせて、同じ時期に出ていることの多い首や肩のこり、眠りの浅さも、同じ施術の中で対象にします。
鍼が働きかけるのは、腸のはたらきに影響する神経の経路と、緊張が残っている筋肉です。腸そのものの形や組織を変える施術ではありません。薬の量や種類を変える判断、食事の内容を決めることは、当院ではなく主治医の領域です。
不安や緊張がとくに強い方では、鍼灸だけでは変化が小さいことがあります。その場合は、3回ほどの時点で見込みをお伝えし、心療内科など専門の科と並行することも含めてご相談します。
効果の出方には個人差があります。施術後は一時的にだるさが出ることがあり、通常は数時間から1日ほどでおさまります。
研究で報告されていること
過敏性腸症候群に対する鍼灸は、研究の上では、鍼灸そのものの効果として確かめられた段階に至っていません。本物の鍼と、比較のための偽の鍼を比べた試験では、症状の重さと生活のしやすさのどちらでも、両者の差は示されていません。加えて、これまでの研究の大半は下痢型の方を対象にしていて、便秘型と混合型については、効かないという結果があるわけではなく、確かめた研究そのものが少ない状態です。当院はこの状況をふまえたうえで、症状を完全になくすことではなく、症状の出る日を減らし、緊張する場面での反応をやわらげることを目的に施術をしています。
過敏性腸症候群の鍼灸についてよくある質問
- 下痢型と便秘型で、施術は変わりますか?
-
施術の組み立ての基本は変わりません。手足への鍼通電と、下腹部・背中から腰への鍼を組み合わせる方針は、どの型でも同じです。下腹部で鍼をする位置と刺激の強さは、その日の触診で調整します。一方で、研究の状況には差があります。鍼灸の効果を調べた研究の大半は下痢型の方を対象にしていて、便秘型と混合型では、確かめた研究そのものが少ない状態です。便秘型・混合型の方には、この点を先にお伝えしたうえで受けていただいています。
- 整腸剤や下痢止めを飲みながら受けられますか?
-
受けていただけます。薬は腸の中の環境や動きに直接働きかけ、鍼灸は神経の経路を通じて働きかけるもので、入り口が違います。当院に通われている間も、薬は主治医の指示どおりに続けてください。問診では、飲んでいる薬の名前をお知らせいただいています。
ご予約
ご来院当日の流れ、お着替え、お支払い方法については、「初めての方へ」のページで説明しています。
予約状況の確認とご予約は、予約ページから直接お取りいただけます。
このページは、過敏性腸症候群に対する鍼灸について、当院の考え方をまとめたものです。個別の診断や治療方針の判断に代わるものではありません。検査や治療については、かかりつけの医師にご確認ください。
参考文献
- Manheimer E, Cheng K, Wieland LS, et al. Acupuncture for treatment of irritable bowel syndrome. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2012;(5):CD005111. DOI
- Yang Y, Rao K, Zhan K, et al. Clinical evidence of acupuncture and moxibustion for irritable bowel syndrome: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Frontiers in Public Health. 2022;10:1022145. DOI
- 日本消化器病学会 編. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020—過敏性腸症候群(IBS)改訂第2版. 南江堂; 2020.
